障害者団体のNPO法人化の提案
2002/12/15
2003年度より始まる「支援費制度」は、さしあたっての事業変更は少ないものの、大きな変化を含んでいます。
しかしこれは、障害者の自立支援へ方向転換した末の施策変更ではなく、国家・地方財政の悪化からの安上がりの福祉施策への転換です。
契約制度という受益者負担すなわち利用者の負担増と、事業の民間委託による行政の負担軽減です。
とはいえ、これらは従来、私たち障害者運動が主張してきた、施策の障害者当事者の意見尊重のチャンスでもあり、また施策の当事者たる障害者関連団体への委託を要求してきたことと重なり合うところがあります。
介護保険制度の新設の時から予想されたことでもあり、福祉の流れとしても押しとどめられないことであるならば、この制度変更を受けてたつ、むしろこの変換を機に、私たちの側の施策イメージを行政に逆提案することが課題ではないでしょうか。
負担あるところに発言権あり、は行政にも否定できなくなっています。
そのような確かな動きが出来るためにも、各障害者関連団体がNPO法人として確立するまでの組織の整備が必要となっています。
私たちはここ数年、市内障害者関連団体の連合による「社会福祉法人尼崎市障害者事業団」を設置しようと、数団体の賛同を得て動き出していました。しかし、決定権を持つ県や市の担当部局は社会福祉法人基準の「緩やか化」を適用する気は無く、むしろ従来の1億円の基金所持の条件を下げようとはせず、市内障害者関連団体の連合による社会福祉法人の設立を積極支援しようとはしませんでした。
今春支援費制度として事業変更となる「身体障害者ガイドヘルパー派遣事業」についても、紆余曲折を経ています。
従来、派遣事業3000万円を受託してきた「尼崎市身体障害者連盟福祉協会」についても、当初、従来の実績から「法人」格相当とみなして委託できる、との担当部局から見解がありましたが、結局、任意団体であるから「できない」と変わりました。
これまでいくつかの市の広報事業を受託してきた「有限会社障害者作業所のぞみ」と、いくつかの市内障害者関連NPO法人の事業参入となるのではと思われます。
これとても、障害者当事者団体ががんばろうと言っている「社会福祉法人尼崎市障害者事業団」設立を支援・援助していたならば、受け皿としていい形のものが出来ていたはずでした。しかし、福祉担当部局は、障害者団体の自立や独立性に期待と信頼を寄せてきませんでしたから、このようなものの設立を考えようとしませんでした。
動きは遅れましたが、であるならば、法的にも保障された各団体ごとのNPO法人化を自分たちの力で実現し、受け皿探しをしている担当部局へ、確立された組織として事業委託を申し入れる時期に来ました。
これらは尼崎市の方向としても確立されつつある流れです。
1.2002年10月に出された「尼崎市経営再建プログラム 136ページ」では、削減計画の事業項目と削減額に大半のページ枚数を割く中、1ページだけですがこうあげています。
「(1)自立・参画・協働の経営」として、「3つの経営(1.地域的経営:地域住民の主体的講堂と地域性を活かしたまちづくり、2.民間的経営:民間事業者、NPO、ボランティアの専門性を活かしたまちづくり、3.行政的経営:1,2の活動を支え、地域のトータルマネージメントを図るまちづくり)を柱として進めることであり、自立・参画・協働の視点から、従来の行政主導を、地域、民間が主体となるまちづくりへと移行することが重要である。」
2.2002年12月24日の白井市長就任あいさつでは、NPOへの強い言及があります。
「次に「福祉」です。高齢社会から超高齢社会へ移りつつある中で、高齢者の福祉需要は確実に増加しております。また経済の低迷や共働き家庭の増加などによる福祉サービスも拡大しております。この増え続ける福祉需要に対応するため、市民、事業者、NPOの方々と共に支えていく仕組みづくりが大切であると考えております。特に、今後、大きな役割が見込まれますNPOにつきましては、活動の支障となっている課題を解決していくための施策を共に検討し、その活動を支援してまいります。」
3.市議会でもさまざまな討議がされています。「尼崎市議会公式ホームページ」で検索した中でも次のような質問・答弁がなされています。
<平成14年6月定例会(第5回)より>
質問:尼崎市経営再建プログラムについて質問させていただきます。(略)市民の協力を求める手法にしても、単にこのプログラムを説明し、理解を求めるとあるだけで、市民の尼崎市経営への参画のシステムづくりなどの新しい視点は見当たりません。そこでお尋ねいたします。(略)第3点目、この経営再建プログラムには、NPOなどとの協力を打ち出しておりますが、尼崎のNPOの数はまだまだ少ないようであります。NPOなどとの連携ということに目を向けると、尼崎のNPOの実態とその役割、方向性などを示すことについて行政としての対応が求められるのは当然であります。そこで質問いたします。尼崎のNPOの実態は、阪神間の中で比べてどういう状況なのでしょうか。もしNPOの数が少ないとすれば、それはなぜだと考えていますか。協働のまちづくりを進めるうえで、尼崎のNPOの現状についてどう考えておられますか。
答弁:本市のNPOの実態と役割などに関する御質問に順次お答えいたします。 まず、尼崎のNPOの実態は阪神間においてどういう状況にあるのかといったお尋ねでございます。お答えいたします。現時点での特定非営利活動促進法に基づく本市のNPOの団体数は6団体でございます。そこで、阪神間の状況を申し上げますと、西宮市が17、芦屋市10、伊丹市5、宝塚市12、川西市5団体が設立されております。このように、西宮市や宝塚市に比べますと低い状況にあるわけでございますけれども、この平成14年度に入りまして、本市におきまして新たに2団体が設立されております。そういったことで、わずかでありますが、今後増加の傾向が見られるのかなと、そのように思っております。次に、NPOの数が少ないとすれば、それはなぜかといったお尋ねでございます。お答え申し上げます。本来、NPOの認証などの所轄庁は兵庫県でございます。本市におきましても、NPOの情報の提供や支援、更にはボランティアグループに対し、兵庫県からのボランタリー情報、こういったものも提供を行っておりますし、また、NPOの認証に係る相談にも応じるなど、いわば窓口的な役割をも果たしておるところでございます。こうした取り組みを行っているところでありますが、さきほど申し上げましたように、数字的には近隣他都市に比べ認証数が低いといった状況にございます。ただ、認証数が低い要因は何か、このことを明確にすることは困難でございますが、しいて申し上げるならば、NPOに対する認識度によるものかと思われますので、今後においてNPOに対する認識度が高まれば、認証団体数も増加してくるのではないか、このように思っておるところでございます。最後に、協働のまちづくりを進めるうえで尼崎のNPOの現状についてどう考えているのかといったお尋ねでございます。お答えいたします。本市のNPOの現状は、認証された団体数が少ないといったことがございます。そしてまた活動分野も、特定非営利活動分野といたしましては12分野ございます。そのうち、現在では、まちづくり、福祉の増進、文化芸術、この3分野の範囲にとどまっていることからいたしましても、まだまだ端緒を開いたばかりといった感じがいたしております。したがいまして、当面はこうした現状を踏まえまして、NPOをはじめ市民運動推進関係団体等と連携いたしまして、また一方では、市民、事業者、行政との情報の共有化をいっそう図りながら協働のまちづくりを進めてまいりたい、このように思っておるところでございます。
答弁にありますように「市民の認識度が低いから尼崎市ではNPOが少ない」とのとらえ方です。行政としての期待・責任が無かったことが最大の原因でありますのに・・・。 これが市担当責任者の現状なのでしょう。
当事者市民である私たち障害者関連団体が、お互いの力をあわせて、早急にNPO法人を設立していくことを提案いたします。
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